経営者本人をアピールするために
融資を申し込む際には、必ず事業計画書の提出が求められます。
事業計画書は、金融機関が融資を通すかどうかを判断する上で重要な資料になります。
事業計画書には、決まった書式はありません。
ただし、ある程度書くべき内容は決まっています。
参考となる書式やテンプレートはインターネット上で入手が可能です。
そちらをベースに書き進めていくのがベストでしょう。
参考リンク:マイクロソフトオフィステンプレート
参考リンク:日本政策金融公庫 創業の手引、創業のポイント集
まずは開業動機を明確にしよう
事業計画書における開業動機は、単に「ずっと憧れていた」等の感情を記入する項目ではありません。
「どんな人たちのどういう需要に応えたいのか」
「その需要を満たすうえでなぜいま自分の店が必要なのか」
そういった、開業の決断にいたる経緯を合理的に説明する必要があります。
経営者の略歴は開業動機の説得力に影響
経営者の略歴に書くことは、一般的な履歴書とそう変わりません。
- 最終学歴
- 入退社年月
- 取得した資格
- コンテストの受賞歴 など
それらの情報を箇条書きしていきます。
ここでいかに経験・技能をアピールできるかが開業動機の信頼性を左右します。
くれぐれも記入漏れのないよう注意してください。
取り扱う商品・サービスをアピールするために
融資というのは「現実的に完済できる見込みがある人」に対してしか行われません。
これは、民間の銀行でも政策金融公庫でも同様です。
これから始める商売に関してどこまで具体的な勝算を有しているか。
それが、融資審査の可否に大きく影響します。
セールスポイントをハッキリさせよう
まずはサロンで提供する施術メニューや店販商品の中から、特に主力としているサービス・商品をセールスポイント欄で紹介しましょう。
また店内の雰囲気づくりやカウンセリング体制など、店舗そのものの魅力をアピールするのもおすすめです。
ただし、事業計画書の記入スペースにも限りがあります。
何をアピールするにしても1から100まで紹介することはできません。
最小限の文字数でサロンの全体像がしっかり伝わるような文章化を心がけてみてください。
市場や競合他店の状況を調べる作業も必要
「このサロンは成功する」という信頼感を融資元に与えるためには、単にセールスポイントを用意するだけでは終わりません。
市場や競合他店の状況を調べたうえ、対象エリアにおいて「自店にしか満たせない需要」を明確にすることで、はじめてサロン開業の合理性が認められます。
参考記事:顧客があなたのお店だけに通うになる圧倒的差別化テクニック5選
また好立地の確保や事前予約の状況など、新規客を増やすうえでのプラス要素を一緒にアピールできるとなお効果的です。
ターゲットに合わせた経営戦略を立てよう
自店だけのセールスポイントを確立したら、次にそれをターゲット層までどう伝えるかを考える必要があります。
- SNSを通じた情報発信
- チラシ・はがき等のポスティング
- 既存顧客からの紹介に特典を付ける
など、ターゲット層に応じて様々な宣伝パターンを検討してみましょう。
また来店の頻度によって回数制と月額制を使い分けるなど、施術内容に適した料金プランを用意することも大切です。
経営戦略はターゲット層が普段どのように情報収集をし、そしてどういうスタイルでサロンに通うのかを考えながら記入するよう心がけてください。
金銭面について具体的に記述すべき項目
事業計画書においてもっとも苦労するのは、必要資金や売り上げ予測といった、金銭面に関する具体的な見積もり作業です。
独力での算出に自信がない方は、創業融資の支援に対応した税理士事務所を利用することも適宜検討してみてください。
設備資金および開業後の運転資金
設備資金とは開業準備における初期投資のことです。
内外装のデザイン・施行費や各種設備費などがこれに該当します。
また店舗用の物件を借りるのであれば、敷金礼金や前払い家賃を計算に入れることも忘れてはいけません。
一方で、開業後の運転資金に含められるのは、広告宣伝や人材募集の予算、数ヵ月分の諸経費などに限られます。
創業融資はあくまでも開業に必要なお金を補う制度です。
「軌道に乗るまで時間がかかりそう」などの理由で運転資金分を多く借りるのは、非現実的といえるでしょう。
従業員数および取引関係
従業員数や取引関係といった項目は、運営体制の合理性をアピールするために存在します。
従業員が不足していると案内できる客数が限られてしまいます。
逆に人材過多だと人件費がかさんでしまいます
利益を最大化するためには席数や営業日時に応じた最適の従業員数を導き出すことが重要です。
一方、取引関係については、備品の仕入れ元などを有りのまま記載すればOKです。
販売先に関しても「個人」と書いておけば問題ありません。
ただし予約がすでに複数入っている場合は、融資審査を有利に運ぶためにもぜひ見込み客のリストを作成しておきましょう。
売上高や経費に基づく毎月の利益見込
商品・サービスの売上高は単価×客数で求められ、サロンの場合は技術料と店販売上の両面から計算する必要があります。
そこから材料費を差し引いた金額が「売上総利益」となります。
ですが、利益に関する計算はまだ終わりません。
さらに店舗の家賃や光熱費、従業員の給与や福利厚生といった様々な経費を差し引くことで、ようやく融資審査に関わる「営業利益」を求めることができます。
関係各社への見積もり請求も含めると非常に時間のかかる作業になります。
開業が初めての方は、税理士などの専門家に相談してみましょう。
借入希望額および借入以外での資金調達方法
設備資金と運転資金を合わせた数字が「開業に必要な資金の総額」となります。
借入希望額は原則、この必要資金の範囲内で設定することになります。
また自己資金や近親者からの援助など、借入以外での資金調達方法があれば、その分は借入希望額から差し引かなければいけません。
こうして必要な資金と調達する資金の合計を揃えれば、ようやく事業計画書に関する全作業が完了します。
もっとも、実際に融資が受けられるのは申込日の約1ヶ月後になります。
サロン開業の見通しが立っている方は、なるべく早いうちから事業計画書に手を付けるよう心がけてください。
既存の借入状況を書くことも忘れずに
銀行などからすでにお金を借りている場合は、借入金の使い道や残債務、年間返済額といった情報を漏れなく記載しておきましょう。
なおここでいう「借入状況」には、住宅ローンや大学の奨学金といった、サロンの開業と無関係な借入も含まれます。
申込者の借入状況は信用情報機関に全て記録されています。
たとえ単なる記入忘れだったとしても、融資元からは「借金の存在を隠そうとしている」と判断されかねません。
サロン開業の際はご自身の借入状況を今一度整理しておくよう心がけてください。
まとめ
①開業の動機や目的が、自身の経験に基づいた合理的なものであること
②自店にしかない強みを、適切な手段でターゲット層に伝えること
③必要な資金と営業利益の想定値を、具体的な数字であらわすこと
以上を明確にすることは、単に事業計画書を書きやすくするだけはありません。
その後のビジネスで成功を収めることにもつながります。
銀行や政府の融資制度を利用する際は、ぜひ事業計画書を通じてご自身のサロンの経営イメージを明確にしてみてください。