個人事業主とは
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことを指します。
ポイントは「法人ではない」ということで、従業員の数や知名度は関係ありません。
一人ではなく、家族や従業員と事業を行なっていても、法人を設立していなければ、個人事業主という扱いになります。
法人とは
法人とは、法律によって人と同じような権利や義務を認められた存在のことです。
会社の代表者である「人」とは全く別の社会的存在になり、「法人」として法律行為などを行えるようになります。
たとえば、何かを契約する際に、代表者や従業員の個人名ではなく、法人名で契約することができるようになります。
法人には株式会社や合同会社など様々な種類があります。
個人事業主と法人どんな違いがあるの?
手続き
個人事業主になるための手続きは、税務署に開業届を提出するだけです。
書類も少なく、費用もかかりません。
一方、法人設立のための手続きは、定款の作成や登記手続きなど、複雑な手続きが必要になります。
手続きには、数週間〜数ヶ月かかることもあります。
また、資本金のほかに、手続き費用として10〜20数万円が必要になります。
開業後の経理手続きについては、個人事業主として開業すると、毎年事業の収支を計算して、所得額を申告する確定申告が必要です。
今は、会計ソフトや確定申告サービスが一般化しているので、そこまで規模が大きくなければ、一人で行うことが可能です。
一方、法人の決算は、専門的な知識が必要なため、税理士に依頼する必要があり、
そのためのコストもかかってくることになります。
税金
個人事業主か、法人かの選択で重要になってくるのが税金です。
個人事業主が支払うのは所得税です。
1月1日から12月31日までの売り上げの合計額から、必要経費を差し引いた額、つまり、もうけに対して課税されます。
税率は5〜45%と、所得に応じて変わる累進課税です。
所得が少ない時は良いのですが、増えた時には大きく税率が上がってしまうことに注意が必要です。
一方、法人が支払うのは法人税です。
税率は15〜23.4%で、法人の種類や規模などによって定められた比例税率(固定税率)が適用されます。
そのため、大きくもうかった時でも税金の負担はそこまで変わりません。
また、赤字になってしまった時にも違いがあります。
個人事業主の場合には、所得税や住民税の負担はなくて済みます。
しかし、法人の場合は、たとえ赤字でも、法人住民税の均等割部分(最低7万円程度)は、必ずかかってくることになります。
経費
何が経費として計上できるかは、税金の計算にも関わってくる大事なポイントです。
個人事業主も法人も、基本的に事業にかかった費用は、すべて経費として計上することができます。
しかし、認められる経費の幅は、個人事業主の方が狭く、法人の方が幅が広く柔軟なのが特徴です。
たとえば、個人事業主では、売上から経費を差し引いた分が事業所得となり、「給与」という概念がありません。
そのため、個人事業主の自分自身の給与は、経費として計上できません。
しかし、法人の場合は、自分に支払った給与も経費として計上することができます。
さらに、自身の給与に給与所得控除が適用されるので、個人としての節税対策にも有効です。
そのほか賞与や退職金、社宅の賃料なども幅広く経費とできるため、節税効果が高くなります。
信用
個人事業主は、法人と比べて、社会的信用は低いと言えるでしょう。
法人の設立には登記が必要で、その運営も会社法という法律に則って行われます。
そのため、社会的信用は高くなり、取引先の開拓や金融機関の融資などの面で有利になります。
中には、個人事業主とは取引ができない企業もあります。
また、求人の際にも、求職者は安定した雇用を求めるため、より信用力のある法人に人が集まりやすいという傾向があります。
社会保険の加入
従業員が5人未満の個人事業主は、社会保険(厚生年金、健康保険など)の加入は任意です。
社会保険料が全額自己負担のため、加入していない個人事業主も少なくありません。
一方、すべての法人は、たとえ代表者1人だけであっても、社会保険の加入が義務づけられています。
社会保険に加入すると、代表者自身の老後の年金が増えることになり、また、従業員にとっても福利厚生の充実につながります。
社会保険に加入できることを条件として求職している人もいるため、採用の際のアピールポイントになるでしょう。
その反面、社会保険料のコストや手続きの負担は増えます。
メリットとデメリット両面があるので、様々な要素を含めて判断していく必要があります。
それぞれのメリット・デメリット
個人事業主と法人それぞれのメリットとデメリットをまとめてみましょう。
個人事業主のメリット・デメリット
メリット
- 開業手続きが簡単
- 初期費用が抑えられる
- 利益が少ない間は税金がお得
- 税務申告が簡単
デメリット
- 社会的信用が低く、融資などを受けにくい
- 人材の採用に不利
- 経費にできる範囲が狭い
- 利益が増えると法人より税金が高くなる
法人のメリット・デメリット
メリット
- 所得が多ければ節税効果が高い
- 社会的信用が高く、融資などに有利
- 人材の採用に有利
- 社会保険に加入できる
デメリット
- 設立手続きに時間と費用がかかる
- 赤字でも税金がかかる
- 会計事務などが煩雑
- 社会保険のコスト増
個人事業主か法人か 選択のポイント
では、実際に、個人事業主と法人どちらを選ぶのがいいのでしょうか。
それには、見込める利益や目指すサロンの形が関わってきます。
小さく始めるなら個人事業主
見込める利益が少ないうちは、個人事業主からスタートするのがおすすめです。
利益が少ない間は、個人事業主に課される所得税の方がお得になります。
開業手続きが簡単で、初期費用も抑えられるので始めやすいでしょう。
その後、軌道に乗ってきたら、タイミングをみて法人化することも可能です。
利益が見込める、大きくサロン展開したい場合は法人設立
あらかじめ一定の利益が見込める場合は、法人の方が節税効果が高くなります。
また、目指しているのが、多くのスタッフを雇って展開していくようなサロンの場合、法人の方がメリットが大きいでしょう。
社会的信用が高くなるので、金融機関の融資や取引先との関係で有利になります。
また、人材採用の面でも、スタッフを集めやすくなります。
まとめ
個人事業主か法人かの選択には、開業後の利益の見込みや、どんなサロンを目指しているのかが大事になってきます。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分の理想のサロンを実現できる形態を選びましょう。